発達障害
生まれつきの脳機能特性のため、小さなころから行動や感情に特徴があり社会生活に支障をきたす場合に発達障害と診断されます。本人や周囲の人が特性と上手に付き合い、大きな困難を生じることなく生活できている場合もあり、そういった場合にはあえて発達障害と診断するメリットが乏しいかもしれません。全体として男児に多く遺伝する傾向があります。
発達障害を分かり易くするための大まかな分類
発達障害は明瞭な区分が難しいので、非常に診断が難しいことが多いです。いくつもの特徴を併せ持つ方もいらっしゃいます。ここではわかりにくい発達障害を整理するために大きく3つに分けて説明します。公式な分類ではありません。
①広汎性発達障害(DSM-5では自閉症スペクトラム障害)
自閉症
コミュニケーションや自然な人との関わりが苦手で、こだわりが強く同じような言動を繰り返したり、特定の何かに執着したりして、年齢相応の対人関係や社会参加が難しくなる障害です。言葉や知能の発達が遅い傾向があります。
アスペルガー症候群
自閉症と同じような特徴を備えている一方で、言語や知能の遅れがない障害です。変わった人、と評価されていることが多くあります。
②注意欠陥・多動性障害
不注意、衝動性、多動性を中心症状とする障害です。
不注意:集中を持続する、素早く反応する、察知する、話を聞き続けることが苦手であることです。
衝動性:悪い結果が起こるかもしれないことでも深く考えることなく突き進んでしまう、順番が待てない、他者の行動を遮って行動するなどです。
多動性:そわそわ落ち着きがないこと、活発に動き回ったりおしゃべりをしたりすることです。
どのような症状が中心に出ているかによって、不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型、混合型に分類されます。気分の変動や不安症を伴うことが多いです。
③学習障害、会話言語機能の障害、運動機能の障害
学習障害:知的な問題がないにも関わらず、文字が読めない・書けない、算数ができないなど、特定の学習能力だけが極端に低くなる障害です。
会話言語機能の障害:言語能力は低くないのに声に出して言うことが苦手であったり、言語理解や表現だけが特別に苦手だったりする障害です。
運動機能の障害:体を動かすことに関してとても不器用で、知的障害などの別の病気で説明がつかない障害です。
診断
幼少期の様子やこれまでの生活状況を伺って診断します。知的能力や発達のばらつきを調べる心理検査を行うことで、どのような特性があるか分かる場合があります。
治療
患者さんが適応しやすい生活環境を作っていくことと、患者さん自身に適応しやすい態度を技術として身に付けてもらう訓練をすることで対応します。発達障害を根治させるお薬はまだありませんが、症状を軽くするお薬が使える場合があります。
メッセージ
個性と障害の明確な区別は難しいです。白から黒に色が移り変わる途中で、どこまでが白でどこからが黒かと言われてもわかりませんし、評価には個人差があるでしょう。文化圏によっても判断が変わります。患者さん本人や周囲が困らなければ障害と考える必要はありません。障害をやっつける方法を考えるのではなく、どう工夫すればお互いに困らず個性として付き合っていけるのかを可能な限り考える必要があります。